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写真家 山谷佑介がヨーロッパで体験したこと(後編)

1973年、写真家・中平卓馬は「なぜ、植物図鑑か」と題した文章を発表し、テレビが普及し映像が氾濫する情報化社会における写真/写真家の役割を問い直した。

<私の視線、それに向って投げ返される事物の視線、その二つのものがせめぎ合う磁場こそ世界そのものであるのだから。見ること、それは自己を他者の視線にさらすことでもある。><イメージを捨て、あるがままの世界に向き合うこと、事物を事物として、また私を私としてこの世界内に正当に位置づけることこそわれわれの、この時代の、表現でなければならない。> ——中平卓馬『なぜ、植物図鑑か』(ちくま学芸文庫)

山谷佑介の「Doors」という作品は、この文章に込められた写真論にまで立ち返り、1970年代よりもさらに日常的に映像・画像に取り囲まれ、相互監視にさらされる2019年にあって、もう一度「写真/写真家はいかに世界と対峙すべきか」というテーマに正面から向き合ったインスタレーションであり、パフォーマンスであると言えるだろう。

インタビュー後編は、いよいよヨーロッパツアーに向けて出発したところから話を進める。香港のデモやイギリスのEU離脱といった世界の振動に生々しく翻弄されながら、上半身裸の身体を観客の前にさらした山谷はヨーロッパでもひたすらドラムを叩き続け、ドラムは山谷に向けてシャッターを切り続けた。
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ヨーロッパツアーへの出発


── 直前に諸々の準備が整って、いよいよ今年9月、ヨーロッパツアーに出発したわけだけど。

山谷
 ツアーは、システムを作ってくれたエンジニアの山森(文生)くんと2人旅で、彼は運転できないし、海外に行くのも初めてだった(笑)。最初はロンドンに入ることになった。まずドラムセットを買うのは厳しいと思ったから、ロンドンにいる日本人4人組のBO NINGENというバンドが昔から友達なので、来日した時に会って、「秋、ひとつよろしく!」みたいな感じで頼んだら、本当にドラムを貸してくれることになって。だから、「まずロンドンでドラムを借りて、最後ロンドンに戻りドラムを返して日本に帰る」というルートが最初に決まった。

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