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FINAL SPANK HAPPYが纏うモード (後編)

ジャズミュージシャン菊地成孔は2008年、ファッションショーと、そこで使用される音楽についてのあらゆる関係性を分析し、これまでにない視点からファッションと音楽について掘り下げた著書『服は何故音楽を必要とするのか?』を上梓。パリ、ミラノ、東京のファッションショーを、各メゾンのショーで流れる音楽=「ウォーキング・ミュージック」の観点から構造分析する、まったく新しいファッション批評を展開した。
それから11年の時が過ぎた2019年、突如リユニオンしたFINAL SPANK HAPPYにおいて、BOSS THE N/K(≠菊地成孔)とOD(≠小田朋美)はいかにして現代の「モード」を身に纏い、ファッション界のトレンドを咀嚼するのか。インタビュー後編では、モードのストリート化、ジェンダーレス化といったキーワードをもとに2人に話を訊く。
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モードのストリート化現象


── FINAL SPANK HAPPY(以下FSH)のライブでは、ステージ中に2人とも何度か着替えるそうですね。

BOSS THE N/K(以下BOSS) そのために「OD着替え中」「BOSS着替え中」というトラックを作り、それを流している間に、交代で着替えています。
OD 「着替え中」のトラックは、パン(*FSHは自分たちのユーザーをこう呼ぶ)の皆さんから、世界中の言葉で「OD、着替え中」とか「ODは今、隠れてパンを食べています」とかのコメントをボイスレコーダーから送っていただいて、それをサンプリングしてるじゃないスか。とても楽しいデス! スタイリングも毎回変えていて、パズルみたいな感じで考えてるじゃないスか。東京でしか着てない衣装、大阪でしか着てない衣装もあって、だからツアーの時はゴッソリ持っていくデス。楽器がない代わりにツアーバンがお洋服を運んでいるデス(笑)。

BOSS つまり簡単に言うと着まわしなんですが(笑)。それがパンの方々の楽しみのひとつになってくれたらと。もちろん、曲だけで満足いただけるレベルの音楽を作っている自負はありますが、とはいえFSHのライブはリップシンクですし、ビジュアル的なエンターテインメント性としてファッションでも楽しめるように心がけています。

── 近年のファッションシーンでは、ハイブランドのストリート化が主流になっていますが、FSHのスタイリングにもそれは反映されていますか?

BOSS モードの世界全体がストリートファッションの潮流を取り入れている、その流れはしばらく止まらないでしょう。2007年にカニエ・ウエストが初めてパリコレに行ったのを菊地くんは目撃しているんですが、その段階ではカニエはパリにとって「誰こいつ?」状態だったそうです。後々カニエはご存知の通り、LOUIS VUITTONを始め、ハイブランドとどんどんコラボするまでに至り、DEFJAM全体がパリコレみたいになった時期さえありましたが、そんなことが起こるとは当時誰も思ってもいませんでした。だけど菊地君は考えが早いので、きっと今後ヒップホップ/R&Bがハイブランドがコラボするようになるだろうと予感して、そのことを自分の本(『服は何故音楽を必要とするのか?』)にも書いていた。今やLOUIS VUITTONがブランド初の黒人デザイナーを起用する時代だから、それはもう当たり前のことになってしまったけど、たった10年くらい前まではまるで想像もつかなかった世界ですよね。

OD ヒップホップ以外でファッションと関係の深い音楽はないデスかね?

BOSS ロックだね。かつてエディ・スリマンという天才デザイナーがCHRISTIAN DIORの服をロックバンドの衣装みたいな感じにしてしまったことがあって、エディはその後SAINT LAURENTでもまったく同じことをやったんだ(笑)。

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