Travel

画家・黒田征太郎のアメリカ旅 (後篇)

画家黒田征太郎が絵を描くことに目覚めたのは16歳の頃だった。1955年に船乗りとして働き始めた黒田が乗った船はアメリカの軍用船だった。アメリカの兵隊たちをベトナムへと運ぶ船の上で、兵隊の持ち込んだ雑誌の挿画に魅かれていった。表紙や中面のコラムや物語のイラストレーションを食い入るように見つめた。絵の勉強を始めた黒田は、1966年、27歳の時にアメリカに渡った。
「とにかく憧れだったアメリカに一度行ってみようと。青雲の志なんてものはありません。野良犬が餌を求めてうろつくようなものだ」

アメリカに渡った目的は単純な思いだった。黒田征太郎は言う。
「エンパイア・ステート・ビルに触りたいという、ただそれだけ。プレジデント・クリーブランド号という船に乗ってハワイ経由で12日間かけてサンフランシスコに辿り着き、そこからグレイハウンドという路線バスを乗り継いで大陸を横断、45日間かけてニューヨークへ。まっしぐらにエンパイア・ステート・ビルに向かいました。こわごわと街角から顔を出すと、ありました。輝いていました。駆け寄って、抱きついて、キスをしました。やったと思ったのと同時に、力が抜けてしまって。これが僕の夢だったのかと」
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